2023年8月24日
日本の伝統的な家屋では瓦屋根が使われていることが多くあります。
ただ、瓦にも多くの種類があり、それぞれに特徴があります。
そこでここでは瓦の種類、形状の違いや見分け方、メンテナンス方法などについて紹介していきたいと思います。
瓦にはいろいろな種類があります。
屋根瓦を葺きかえる際に違う素材のものにすることもできますので、まずはどういった種類があるのかということを知っておくことが重要だといえます。
ここでは瓦の種類について紹介していきます。
日本でもっとも一般的な瓦とされているのが「釉薬瓦(陶器瓦)」です。
粘土を使って瓦の形を作り、釉薬といわれるガラス質の薬を塗って高温で焼きます。
こういった作り方は皿や茶わんなどの陶器の作り方と同じですので、「陶器瓦」と呼ばれることがあります。
釉薬を塗ることによって瓦の表面の色艶が良くなり、どういった釉薬を塗るかによって色も好きな色に仕上げることができます。
また、この釉薬は色を決めるだけではなく、「水をはじく」という特性がありますので、水を通しにくくする効果があります。
本来、この瓦は粘土でできているために水が染み込みやすいのですが、釉薬を塗ることによって水を通しにくくし、瓦の下部分にあるルーフィングを守ることができるのです。
釉薬を塗ることで色艶が長持ちするということもあり、耐用年数が非常に長いという特徴があります。
一度設置すれば50年以上持つというものも多いので、瓦自体は長期間にわたってメンテナンスをする必要がないというメリットもあります。
釉薬瓦はかなり値段の幅が広いのも特徴です。
たいていは1㎡あたり5000~15000円ほどとなっています。
いぶし瓦は現在では神社仏閣などで使われることが多い伝統的な瓦です。
基本的な形は粘土でつくるのですが、釉薬は塗らずに窯の中で「いぶす」ことで完成させていきます。
いぶし方、いぶす方法、いぶす時間などによって大きく色が違ってくるのですが、「銀色」「黒色」といった重厚感と高級感があるように仕上がるのが特徴です。
すべて同じ色にならないというのも魅力の一つだと言えるでしょう。
この色合いは窯の中でいぶしている間に瓦に付いてくる炭素膜によって決まってきます。
炭素膜は色合いが決まってくるだけでなく、雨水から瓦を守るという効果もあります。
ただ、長期間の使用によってこの炭素膜がはがれてくることとなりますので、耐用年数は30~60年前後となります。
このいぶし瓦は釉薬瓦よりも高い値段が設定されることが多く、1㎡あたり8000~18000円ほどの値段となっています。
釉薬瓦は粘土で瓦の形を作って釉薬を塗って焼く瓦ですが、粘土で瓦の形を作ってそのまま焼いた瓦を「素焼き瓦」といいます。
こちらはいぶすことなくそのまま焼くために粘土そのものの色合いが出やすく「赤色」になることが多くあります。
非常に素朴な色合いとなるので、この雰囲気を好む人も多くいます。
赤色の瓦となるため「赤瓦」と呼ばれることもあります。
また、明るい色になるためヨーロッパ建築とも相性が良く、「テラコッタ瓦」「スパニッシュ瓦」と呼ばれることもあります。
釉薬などの薬剤や炭素などを瓦につけていないということもあって軽量で耐久性に優れているというメリットがあります。
耐用年数も40~50年ほどあり、しかも安いという特徴があります。
たいていは1㎡あたり5000~9000円ほどとなっています。
これまでは粘土で作った瓦でしたが、セメント瓦は「セメント」「砂」「水」を混ぜて作った瓦です。
セメントに色を混ぜて作ればそのままの色の瓦になるのですが、セメント瓦を作成してから塗料を塗って色をつけるということもあります。
釉薬瓦、いぶし瓦、素焼き瓦は高温で焼くという工程がありますので、そこで「割れてしまう」「縮んでしまう」ということがあります。
そうした瓦は廃棄してしまうために無駄が発生するのですが、セメント瓦は焼くという工程がないため、無駄が発生しにくいというメリットもあります。
そういった理由で陶器瓦よりも安く利用することができます。
ただ、セメント瓦にはいくつかのデメリットもあります。
まずセメント瓦に塗っている塗料は10~20年ほどで剝がれてしまうためにメンテナンスが頻繫に必要となります。
メンテナンス時に瓦に塗料を塗りなおすという作業が増えるのです。
また、陶器瓦よりも「重い」「耐久性が低い」といった特徴があるために建物に負荷をかけるだけでなく、破損なども起こりやすいのです。
それらの理由からセメント瓦は利用が減少してきています。
セメント瓦の表面に「着色スラリー」という塗料を塗った瓦を「モニエル瓦(コンクリート瓦)」といいます。
「モニエル」というのはこの塗料を「日本モニエル株式会社」が製造していたことが関係しています。
この着色スラリーは防水性に優れているためにモニエル瓦はセメント瓦よりも防水性に優れているとされています。
セメント瓦もモニエル瓦も原材料はセメントのためにこの2種類は見分けにくいのですが、瓦の切り口の部分が「ギザギザしている」のがモニエル瓦、「まっすぐ」なのがセメント瓦となっています。
ただ、こちらのモニエル瓦も近年は利用が減少してきています。
値段についてはセメント瓦、モニエル瓦はたいてい同じくらいで1㎡あたり5000~9000円ほどとなっています。
耐用年数は塗料が10~20年ほど、瓦は20~40年ほどとなっています。
「屋根の重さ」を軽くすることが「耐震性能を高める」ということが言われるようになってから注目されているのが軽量防災瓦です。
瓦屋根の特徴として「重い」ということがあるのですが、こちらは従来の瓦よりも少し重量が軽くなっているという特徴があります。
近年新築の建物で瓦屋根となっている陶器瓦は多くがこの軽量防災瓦となっています。
瓦には素材の種類の違いだけでなく、形状が違うという特徴もあります。
ここでは瓦の形状について紹介していきます。
こちらは日本でもっとも多い瓦の形状です。
波のように緩やかなカーブがあるのが特徴の「和瓦」です。
「瓦」というと自然に頭に浮かぶのはおそらくこの瓦でしょう。
「日本」つまり「Japanese」ということで「J型」と呼ばれることがあります。
自然な緩やかなカーブがあり、そこに空気を含むために保温性、換気性に優れています。
このカーブの部分から湿度が必要に応じて蒸発するようになっているため換気性があるのです。
夏は湿度が高くなる屋根ですが湿度が排出されていきますし、冬は保温性があるために寒さから建物を守るという効果があります。
こうした特徴から日本で使用するのに適している瓦だと言えるでしょう。
また、この緩やかなカーブは屋根の上に雨や雪を溜まらせないという効果があります。
雨や雪が降ってもその形状から滑り落ちるようになっていますので、建物に負荷をかけることがありません。
特に釉薬瓦の和瓦は摩擦抵抗が少ないために雨や雪が下に落ちやすくなっていますので、雨や雪が多く降るという地域には特におすすめの瓦だと言えます。
設置の面からするとこの波のような形のカーブによって、隣の瓦とうまく組み合わさることで固定しやすいというメリットがあります。
多少の地震程度であれば、瓦同士がしっかりと組み合わさっていることで落下しにくくなります。
このように地形的、気候的にも和瓦は日本に適している瓦となっているのです。
こちらは平面、つまりフラットな形状となっている瓦です。
フラット(Flat)の「F」をとって「F型」と呼ばれることもあります。
ちなみにフランスで多く見られる形状であることから「France」の「F」からきているという説もあります。
日本の伝統的な様式の建物は波型の和瓦が合うのですが、こちらはフラットな形状のためにどういった建物にも合わせやすいというメリットがあります。
和風建築、洋風建築を選ばない瓦だと言えるでしょう。
平板瓦はその形状からすっきりとして見えるために屋根が広く見える、使えるという特徴があります。
特に平面になることから「太陽光発電システム」を利用したいという人にはおすすめの瓦となります。
和瓦などでも太陽光発電システムのパネルを設置することはできるのですが、瓦自体が波うっている形状のためにシステムの装置やパネルが目立ってしまう、設置しにくいという可能性があります。
平板瓦のように平面であればパネル部分もスムーズになじませることができるためにメリットは大きいものとなります。
屋根を広く見せたい、太陽光発電システムを利用したいという人におすすめの瓦だと言えるでしょう。
こちらは波のような緩やかなカーブがある和瓦よりもさらに大きくカーブしている瓦です。
「Spanish」の「S」をとって「S型」と呼ばれることもあります。
こういった瓦は南ヨーロッパで使用されることが多く、日本でも伝統的な日本家屋よりも南欧風な洋風家屋で使用されています。
そのために「Spain(スペイン)が名前に関係していると言えるでしょう。
大きなカーブがあるためにその部分に空気を含むことができる形状です。
保温性と通気性が高く、夏は湿度が溜まらないように、冬は保温性を維持できるようになっているため、保温性と通気性を考えながら建物の外観は洋風なものに合わせたいという場合に適した瓦だと言えます。
まとめ
瓦屋根は日本で昔から使われてきた屋根材です。
一般的には和瓦のイメージが強いのですが、実はいろいろな種類、形状のものがあるために建物に合わせて使い分けができるようになっています。
メンテナンス時などに気に入った瓦に葺きかえるということも可能なので、ぜひ考えてみましょう。
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