2023年6月2日
近年日本では地震が増えてきていると言われています。
地震は家屋の屋根にも大きな影響を与えます。
一般的には地震に備えるためには屋根を軽量化する必要があると言われています。
そこでここでは屋根の軽量化、耐震性との関係性、軽量化の際の注意点などについて紹介していきたいと思います。
実は屋根の重さについては建築基準法によって3つに分類されています。
この分類によって法令上の耐震性能が決められていますので、まずはこれを押さえておくことが重要となっています。
建築基準法で「非常に重い屋根」と分類されているのは「土葺き屋根」です。
こちらは「約60kg/㎡」となっており、屋根材としてはトップクラスの重さと言えます。
土葺き屋根は昭和初期ごろまでは日本で主流のものでした。
瓦を固定するために屋根に土を敷くというもので、その重さによって瓦がズレることを防ぐことが可能となります。
また、土を敷いていることによって断熱性や遮音性も期待できます。
ただ、重量は非常に重いものとなるというデメリットがあります。
建築基準法で「重い屋根」と分類されているのは「瓦屋根」「セメント瓦」といった瓦の屋根です。
こちらは「約42kg/㎡」という重量であり、かなりの重さがあります。
日本では昔から瓦が屋根材として使われることが多く、和風の家では現在でも瓦屋根が多くなっています。
こうした屋根は高い耐久性、断熱性、遮音性を持っているというメリットがあるのですが、やはり「重い」ということがデメリットとなっています。
建築基準法で「軽い屋根」に分類されているのは「コロニアル」「ルーガ」「金属屋根」などです。
ただ、コロニアルやルーガが「約20kg/㎡」という重さに対して、金属屋根が「約5kg/㎡」とかなりの幅があるのも特徴と言えます。
そのため実感がわきにくいかもしれませんが、瓦屋根と比べれば金属屋根は1/8ほどの重さしかないというところがポイントだと言えるでしょう。
一般的に「屋根が重いと耐震性が低下する」と言われていますが、これはどういったことが原因なのでしょうか。
まず建物の重さは建物の基礎部分や柱が支えることとなります。
当然屋根はその上に乗っている部分となるため、ここが重いということはそれだけ建物に負荷がかかることとなります。
そのため、屋根が重いことは建物が壊れやすいということにもつながるのです。
また、基礎部分や柱を支点とした場合、地震が起きた時には屋根が遠心力が発生する部分となります。
屋根が重いということは発生する遠心力が大きいものとなってしまうため、それだけ「激しく揺れる」ということになるのです。
激しく揺れるということはそれだけ被害が大きくなるということになるのです。
これが「屋根が重いほど耐震性が低下する」ということです。
そこで屋根を軽量化することで耐震性を向上させるという工事が注目されているのです。
屋根を軽くすることで基礎部分や柱にかかる負荷を低下させることができ、地震が起きた際にも揺れを小さくすることができます。
また、揺れによって屋根材が落下してしまうという場合にも落下物が軽い方が被害は少なくなります。
特に瓦が使用されている場合には落下すると割れてしまうために危険性が高まるということもあります。
もちろん瓦自体に重量があるため、落下地点にある人や物に被害を与えやすいということもあります。
日本では耐震基準は年々厳しめに設定されてきています。
その基準を満たすための耐震補強工事も次々と行われています。
ただ、こうした工事にはもちろんある程度の費用がかかることとなります。
一般的な瓦、セメント瓦を軽量なガルバリウム鋼板の屋根材などに交換していく際には100万円前後が費用の目安と言われています。
ただ、瓦が他の瓦と組み合わさるような構造で、しかも軽量化された「防災瓦」を使用する際には130万円前後かかると言われています。
これは屋根を軽量化したいが瓦は使いたいという人が使いやすいもので、従来の瓦よりも1~2割ほど軽くなっており軽量化された瓦となっています。
ただし、あくまでも軽量化された瓦ですので、金属屋根などと比べるとはるかに重い屋根であることには違いありません。
また、耐震補強工事には瓦に金属製の固定具を入れて固定力を強めるという方法や、瓦を強固に固定する下地材を使用するといった方法もあります。
瓦を使いたいという人にはこういった方法がおすすめだと言えます。
しかし単純に屋根だけを軽量化すれば耐震補強工事をしたということにはなりません。
屋根だけを軽くするのではなく、建物の基礎部分や柱についても耐震診断を施した上で強化していくことが重要となります。
こうした基礎部分や柱を強化した上で、屋根を軽量化することで充分な耐震補強工事ができると言えるのです。
基礎部分や柱を強化した上で、重い瓦屋根などをガルバリウム鋼板屋根などに葺き替えることで屋根の軽量化、耐震補強を行うことができると言えるでしょう。
旧建築基準法によって建設された家屋について耐震改修工事を行うと、住んでいる自治体から補助金が支給される場合があります。
この際の耐震改修工事には色々な種類があるのですが、大きく分けると「建物の基礎」「接合部の補強」「壁の補強」「屋根の軽量化」の4つがあります。
また、重い屋根を軽い屋根に葺き替える工事についても補助金対象の工事として認められることが多くなっています。
しかしこうした耐震補強工事は行えば必ず補助金が支給されるというわけではありません。
支給については手続きの方法、支給金額、支給条件などは自治体によって違います。
自治体によっては、「その自治体にある施工業者を利用しなければいけない」といった条件がついている場合があります。
こうした条件がついている場合には自治体にある施工業者を利用する必要があります。
さらにこうした補助金を申請する際には「耐震診断」「耐震設計等」を行う必要があります。
こうした耐震診断はたいていは10万円前後の費用がかかるようになっており、耐震設計等についても10~20万円という費用がかかる場合があります。
こうした出費をした上である程度指定された施工業者を利用することとなりますので、場合によっては補助金の申請をせずに自分で自由に施工業者を選んで工事をしてもらった方がトータルで安く済むという場合もあります。
どちらを選んだ方が費用を抑えることができるかということを考えた上で選んでいくと良いでしょう。
まとめ
日本では近年定期的に地震が起こるようになってきています。
しかし従来の日本家屋では重い屋根材である瓦が多く使われており、屋根の重量が重くなっているという特徴があります。
屋根が重いとそれだけ建物にかかる負荷は大きいものとなり、耐震性は低くなります。
そこで屋根の軽量化を行うことで、耐震性を向上させることができるのです。
また、この際に耐震診断などを行うことで、どの部分を強化する必要があるのかということもはっきりします。
建物自体の基礎部分や柱を強化した上で、屋根を軽量化すれば耐震性を大きく向上させることができると言えるでしょう。
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