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屋根の豆知識

スレート・セメント瓦の屋根工事に必要なアスベスト調査とは?

2023年9月29日

かつて建築業界で広く利用されていた「アスベスト」という素材が、健康に深刻な影響を及ぼす可能性があることが明らかになりました。この発見により、新しい建築物でのアスベストの使用は禁止されましたが、過去に建てられた多くの建物にはまだ残存している可能性があります。

この問題に対処するため、2022年4月から、建物の改修作業を行う際には「アスベスト調査」が必須となりました。これは、潜在的な健康リスクを特定し、適切な対策を講じるためです。

本記事では、特に屋根工事、とりわけスレートやセメント瓦を使用した屋根に関して、必要なアスベスト調査の詳細について解説します。この情報は、安全な改修作業を行う上で重要な役割を果たすでしょう。

アスベストの性質と利用実態

アスベスト調査の目的は、建材中のアスベスト含有を確認することです。では、アスベストとは何か、どのような特性を持ち、どこに使用されているのでしょうか。

この節では、アスベストの基本情報と、一般的に使用されている建材について解説します。

アスベストの基本情報

アスベストは、別名「石綿」と呼ばれる自然由来の繊維状鉱物です。

その優れた耐熱性と耐久性から、防音材、断熱材、保温材など、建築資材として広く採用されてきました。

特にスレート屋根材として頻繁に使用され、その需要の高さから大量に輸入されていました。ピーク時には年間35万トンもの輸入量を記録しています。

しかし、2004年に原則使用禁止となり、輸入量は急減。2012年以降は完全に輸入が禁止され、現在では一切輸入されていません。

2006年にアスベストの製造・使用が禁止されて以降、新築建物でのアスベスト含有建材の使用はなくなりました。ただし、それ以前に建てられた建物には、アスベストが含まれている可能性が高いです。

このため、2006年以前の建物の改築、解体、リノベーションを行う際には、アスベスト調査と報告が義務付けられています。

アスベストが使用されている可能性のある建材

最も一般的なのは、「住宅用スレート屋根材(平板・波板)」や「繊維強化セメント瓦」などの屋根材です。

これらの屋根材、特にスレートや波板スレートには、アスベストが含まれていることが多く、調査の重要なポイントとなっています。

屋根材以外にも、「外壁用窯業系サイディング」「軒天井用けい酸カルシウム板(ケイカルボード)」「フレキシブルボード」など、一般的な建物で広く使用されている建材にもアスベストが含まれている可能性があります。

フレキシブルボード(通称:フレキ板)は、天井材やガレージの壁などによく使用されています。これは繊維強化セメント板の一種で、主に不燃材として利用されています。

室内でよく目にするものには、「ケイカルボード」や「装飾用石膏ボード」があります。特に一般住宅のキッチン天井に、穴あきデザインの装飾石膏ボードがよく使用されています。これは、アスベストの高い耐火性能が、火を頻繁に使用するキッチンに適していたためです。

アスベストの含有率は製造年代によって異なり、一般的に古い年代の製品ほど含有率が高くなっています。実際によく見られる例として、以下のようなものがあります。

・屋根:アスベスト含有住宅用装飾スレート
・軒天井:けい酸カルシウム板第1種
・外壁:アスベスト含有窯業系サイディング
・天井:アスベスト含有装飾石膏ボード
・床:アスベスト含有ビニル床シート

アスベスト調査が求められる建設作業

特定の建設作業を実施する際には、アスベスト調査が法的に義務付けられています。以下に、調査が必要となる主な作業と条件を解説します。

屋根工事における調査の必要性

スレートやセメント瓦を使用した屋根の工事では、材料にアスベストが含まれている可能性があるため、以下のような作業すべてにおいて調査が不可欠です。

・屋根の全面交換

・既存屋根の上からの被覆

・屋根の塗装

これらの作業では、高圧洗浄などの清掃過程でアスベスト繊維が飛散する危険性があるため、解体を伴わない工事でも調査が必要です。同様に、外壁の改修や塗装作業においても調査と報告が義務付けられています。

建築物の大規模工事における調査要件

建築物の解体や改修工事においても、一定の条件下でアスベスト調査が必要となります:

・解体工事:作業対象の床面積が80㎡以上の場合
・改修工事:請負金額が税込100万円以上の場合(材料費含む、調査費用除く)
・工作物(ボイラー、煙突、焼却設備など)の工事:請負金額が税込100万円以上の場合

これらの条件に該当するかどうか判断が難しい場合は、専門業者や自治体の担当部署に確認することをお勧めします。法令遵守を怠ると、厳しい罰則の対象となる可能性があるため、事前の確認が重要です。

アスベスト調査と報告は誰がどのように行うのか

ではアスベストの事前調査や報告は誰がどこに対して、どのように行うものなのでしょうか。

ここではそれらを含めて事前調査と報告の流れについて紹介していきます。

事前調査と報告は誰が行うのか

条件によって建物にアスベストの事前調査や報告が必要ということがわかったとしてもアスベスト調査は自分でする必要はありません。

むしろ素人が自分で調査を行うのは危険と伴うためにやってはいけないのです。

基本的に事前調査や報告については工事を行う業者が行うこととなります。

この事前調査や報告を行うのには2023年10月1日からは厚生労働省が認定している以下の資格を所有している人が行う必要があります。

・一般建築物石綿含有建材調査者(一般調査者)
・特定建築物石綿含有建材調査者(特定調査者)
・一戸建て等石綿含有建材調査者(一戸建て等調査者)

ただし、「日本アスベスト調査診断協会に登録されている者」も「同等以上の能力を有する者」として認可されます。

アスベストが含まれている可能性がある場所の工事を業者に依頼する場合は、その業者にこういった資格を所有していることが前提となります。

もしそれがはっきりと提示されていない、公式サイトなどでも掲載されていない業者には依頼しないということが重要です。

アスベスト検出時の対応手順

専門家による事前調査でアスベストの存在が確認された場合、厳格な安全対策が必要となります。まず、アスベスト繊維の飛散を防ぐための措置を講じ、法定の作業基準に従って工事を進めます。

特に注意が必要なのは、高濃度のアスベストを含む断熱材などの建材です。これらの「解体」「改修」「改造」工事では、都道府県への事前届出が義務付けられています。ただし、一般的なスレート屋根やセメント瓦、窯業系サイディングの場合は、通常この届出は不要です。不明な点は施工業者に確認しましょう。

工事実施者は、法令で定められた飛散防止措置と作業基準を厳守する責任があります。一方、工事発注者は、アスベスト濃度が高い建材の場合、作業実施の届出を行う必要があります。

また、アスベスト調査結果は、工事規模に関わらず、工事期間中常に現場で掲示しなければなりません。掲示内容は大気汚染防止法と石綿障害予防規則に基づいて決められています。

工事完了後、請負業者はアスベスト除去作業の終了報告を発注者に提出します。発注者はこの報告書を適切に保管・管理する義務があります。これらの手順を遵守することで、アスベストによる健康被害のリスクを最小限に抑えることができます。

まとめ

アスベストは、その優れた特性から長年日本の建築業界で広く使用されてきました。しかし、健康への悪影響が判明し、現在では新規使用が禁止されています。ただし、過去の建築物には依然としてアスベストが残存している可能性があります。

このため、建築物の解体や改修を行う際には、専門家によるアスベスト調査が法的に義務付けられています。調査結果に基づき、適切な安全対策を講じた上で工事を進める必要があります。

重要なのは、これらの調査や報告書作成は、認定された資格保持者のみが行えるという点です。そのため、工事を計画する際は、必ず資格を持つ専門業者に依頼することが不可欠です。これにより、アスベストによる健康被害のリスクを最小限に抑えることができます。

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