屋根を支える「垂木(たるき)」とは?役割とメンテナンスについて解説
2023年8月24日
「屋根」という部分には単純に屋根材があるだけでなく、多くの部位があって成立しています。
屋根材の下には屋根下地材と呼ばれる部位があって、それらがあるからこそ屋根材を安定して設置できるのです。
そこでここではそんな屋根下地材の中から「垂木(たるき)」について紹介していきたいと思います。
垂木とはどういったものか
一般的な建物の屋根は勾配がついています。
こうした勾配がついている屋根に設置されている重要な部分、斜面を支えている部分が「垂木」です。
ここではまず垂木がどういったものかについて紹介していきます。
垂木の概要とは
屋根の斜面に沿って縦方向に設置されていく木材が垂木であり、そこには野地板、防水紙、屋根材が固定されていくこととなるため、屋根の部位の中でも特に重要な部分だと言えます。
名前については、屋根の内部の母屋と呼ばれる地面と水平に取り付けられた木材の頂上部分から垂らすように斜めに設置された木材だから「垂木」と呼ばれるようになったとされています。
屋根材が重い瓦屋根なのか軽い金属屋根なのか、軒までどれくらいの長さがあるのかといったことによって垂木のサイズを使い分けるという使い方をしています。
垂木は屋根材、防水紙、野地板のさらに下に設置するものですので、なかなか劣化するということはないのですが、長期間雨漏りなどが続くと劣化していくこともあります。
垂木が劣化、腐食しているほどになると屋根全体の劣化がかなり進んでいるということになりますので、大規模な屋根のメンテナンス工事が必要となっている状態だと言えるでしょう。
垂木が設置される場所は
垂木は外側から見ると「屋根材」「防水紙」「野地板」「垂木」という順番に設置されていきます。
棟木から軒先まで1本の木材によって母屋に対して寄りかかるような状態で垂直に取り付けられています。
屋根材は素材によって多少の違いがありますが、基本的にスレート材や金属屋根材は野地板を貫通して釘やビスによって垂木に固定しています。
瓦屋根の場合は瓦を引っかける部分があるのですが、その桟が野地板を貫通して垂木に固定されています。
ルーフィング(防水紙)はタッカーを使って野地板に設置するのですが、その野地板が釘やビス
を使って垂木に固定されていることとなります。
つまり屋根材、防水紙、野地板などはすべて垂木が土台となって、そこに固定されているということになるのです。
一般的には垂木は「455mm間隔」で設置されることとなっています。
この基準を守っていれば防水紙や野地板をはがさなくても垂木の位置がわかるようになっています。
ただ、この「455mm間隔」は在来工法や木造軸組工法によって使用されている基準ですので、建物によっては「1尺」である「303mm間隔」で設置されている場合もあります。
垂木の設置と働きについて
実際に垂木を設置していく方法と、設置することによってどういった働きが期待できるのかということについて紹介していきます。
垂木を設置する位置について
垂木は母屋の上に屋根の傾斜や流れに沿って設置していくこととなります。
母屋は頂点にくる部分は「棟木」、外壁側は「軒桁」と呼ばれていますので、垂木は母屋、棟木、軒桁の上の部分に取り付けられていくこととなります。
垂木は母屋に「ひねり金物」という専用の金物を設置していきます。
このひねり金物との設置がしっかり固定されていないと強風で屋根がめくれてしまう危険性があります。
垂木の先端部分の断面を「垂木鼻」もしくは「鼻」といいます。
この「鼻」がそのまま露出していると外観が悪いということだけでなく、雨風の影響もすべて受けてしまうこととなります。
そういった被害を防ぐために、この露出した部分には「鼻隠し」と呼ばれる板をかぶせるように設置します。
こうして「鼻」が直接外から見えないようにするだけでなく、雨風から垂木を守ることができるのです。
垂木のサイズについて
垂木の断面のサイズについてはどういった屋根材や屋根の流れ部分の長さなどによって違ってきます。
基本的には屋根が重いほど、それを支えるために大きくて太い垂木が必要となります。
屋根材の素材や特徴
垂木の断面サイズ(縦×横)
軽い波板などの簡易的な屋根
30×40mm
軽い金属屋根
36×45mm 45×45mm
コロニアル
45×60mm
重い屋根瓦
45×75mm 60×75mm
長さについては3~4mほどのものが多くなっています。
垂木は屋根の部分において屋根材や野地板を固定する重要な部分ですので、そのサイズも必要に応じて変える必要があります。
この土台部分は簡単に変更できないということもあるので、重い瓦屋根などの屋根材から軽い金属屋根などの屋根材に葺きかえることは可能ですが、逆に軽い屋根材から重い屋根材に変更はできないというのはこういった理由のためです。
軽い屋根材の垂木と比べると重い屋根材の垂木は断面積が倍以上の太さということがあります。
瓦屋根は金属屋根と比べると何倍も重いということがあるため、この負担を支えるために垂木の太さも太くなっているのです。
垂木のはたらきについて
垂木は多くの重要な働きをしている部材でもあります。
まず上記のように「屋根材」「防水紙」「野地板」を設置して固定するための土台ということもあります。
ここがしっかりと固定されることによって屋根が守られることとなります。
また、単純に屋根部分の構造材としての働きもあります。
母屋と垂木を組んでいくことによって屋根だけでなく建物全体としての構造強度を向上させることにつながります。
こうして母屋と垂木を組み込んでいった上に野地板を貼っていくことによってさらに強度を上げることが可能となります。
建物の強度は柱や外壁だけでなく、屋根の構造にもよるのです。
また、垂木に野地板を設置することによって屋根の面を平面にして屋根材などを施工しやすくするといったメリットもあります。
ここが施工しやすくなって、しっかりと固定できるようになるということが雨風に強い屋根を作ることにつながるのです。
垂木の補修、メンテナンスについて
垂木は屋根の重要な部分となるため、劣化してくると補修やメンテナンスをする必要があります。
ここでは垂木が傷んでくるとどういった問題があるのか、補修するためにはどうすればよいのかということを紹介していきます。
垂木が傷んだり劣化するとどういった問題があるのか
垂木は屋根の斜面を支える土台部分です。
そのため垂木が傷んでくると斜面を支えるということができなくなってきて、変形したり、斜面が盛り上がったり、へこんでしまったりする可能性があります。
大雪が降って屋根に重さが加わってくると、軒先部分、外壁部分に向かって大きな力がかかることとなります。
そうすると屋根の斜面が盛り上がってしまうこととなるのです。
屋根の斜面の途中で木材の腐食、雨漏りなどが起こっていると屋根の重さに耐えられずにへこんでしまうということがあります。
こうして屋根が変形してしまうことによって雨水が正常に流れていくということができなくなるため、雨漏りもしやすくなります。
また、こうして屋根が変形してしまうということは屋根材の下の防水紙にも変な力がかかってしまうこととなります。
圧力によって破れてしまう、裂けてしまう、穴が開いてしまうということも考えられるのです。
防水紙が破れてしまうと雨水を防ぐことができなくなるため、雨漏りしやすい屋根となってしまいます。
このように垂木が傷んでしまうと屋根に大きなトラブルが起きやすくなるため、できるだけ早く補修、メンテナンスをする必要があるといえます。
垂木が傷んでしまう理由には大きく分けると「雨漏り」「雪」の2つがあります。
屋根に特に問題が起きていない場合は経年劣化による傷みはほとんどないため、こうした外的要因によって傷んでいくことが多いのです。
屋根材や防水紙に問題が起きていて、雨漏りがしている場合は垂木にその雨水が侵入していくこととなります。
垂木が雨水にさらされることによって傷んだり、腐食していったりすることとなるのです。
また、豪雪地帯などで、雪が屋根の上に多く積もることによってその雪の重さが垂木に圧をかけることがあります。
この雪の重さによって垂木が折れてしまう、曲がってしまうということがあるのです。
これを防ぐためには雪下ろしを頻繁に行うことが必要となります。
垂木の補修方法
垂木が傷んでしまった場合は補修が必要となります。
しかし垂木は設置されている場所が屋根材、防水紙、野地板のさらに下となっています。
そのため、屋根材を撤去して防水紙を剥がし、野地板も取り除いて垂木を補修したり交換したりすることとなります。
瓦屋根であれば再利用することができますが、ほかの屋根材は基本的には再利用はしないために実質的には屋根の吹き替え工事の下地作り工程を行うこととなるのです。
このように垂木の補修、メンテナンスはかなり大規模な工事となることが多いために定期的にメンテナンスをしておきたいものです。
垂木の補修については「交換」か「補強」をすることとなります。
ただ、交換をする場合は大規模な工事になるだけでなく、母屋などの同じ場所に釘やビスを打ち込むこととなるので固定する力が弱くなる可能性があります。
そのため実際には「補強」されることが多くなっています。
よく使用されるのは「抱かせ」という方法で、傷んだ垂木に新しい垂木を添え木して補強するという方法です。
まとめ
垂木は屋根の部材の中でも屋根材、防水紙、野地板の土台となる部分であり、まさに屋根を支えている部分だといえます。
重要な働きをしている部分ということを踏まえたうえで、傷んだり、完全に劣化してしまう前に定期的にメンテナンスを行っていき、安定した状態を保っていくことが大事なのです。